対イラク戦争の戦略パワーポイント
パワーポイントを、プレゼンテーションの補助として使う代わりに、プレゼンテーションの主体(つまりパワーポイント=プレゼンテーション)として使ってしまうと、そのプレゼンテーションは極端に単純化し幼稚化してしまうものだ。一枚一枚のスライドに収まる短い言葉の羅列と表グラフで説明できることには、限りがあるからだ。
では、パワーポイントを使った戦争の戦略構想など、想像できるであろうか?
2002年8月に米軍中央司令部によって作成された、対イラク戦争の戦略パワーポイントがここにある。機密扱いが解けた政府の書類を収集するナショナル・セキュリティ・アーカイブが、入手したもの。
このパワーポイントで明白なことは、戦争というコンセプトが恐ろしいほど単純化されていることだ。占領 -> フセイン政権打倒 -> 万々歳、と、着々と事が運ぶものと前提されている。ビデオ・ゲームでもこんなに簡単にいくまい。
フセイン政権を攻撃し終わった後は、「UNKNOWN(未定)」と記されていることからも分かるように、何の計画もないことが伺える。それでも、「2006年度の現地の米兵の数は、5千人」と予想しており、何を根拠にこの数字を弾き出したのかよく分からない。
戦争というものは、大勢の「人間」を巻き込むものである。ところが、このパワーポイントによれば、「人間」はまるで存在しないかのようである。現地の人々の民族形成と各民族間の関係、この戦争が彼らに及ぼすであろう影響と、考えられる彼らの反応(家族を殺され、自分の国を占領されれば、協力するどころか敵対するだろうと普通は推測できるが)、現地に送られる米兵士が抱えるであろう問題、などなど、「人間」に関する分析やデータや予測は、このパワーポイントからまるっきり抜けている。
このパワーポイントを元に戦争をおっ始めたのだから、背筋が寒くなる。