「私は(海軍)基地で掃除をしました。木々の枝を拾い集めたり、様々な仕事をしました。」メキシコ原住民語のザポ テック語を第一言語とするマルティネスは、片言のスペイン語で話す。彼は16歳。数週間前、時給8ドル、食事・睡眠ベッド付き、という約束で、KBRの下 請け業者に雇われ、メキシコのワハカからはるばるルイジアナ州までやって来ていた。
8月末、ハリケーン・カトリーナがルイジアナ州やミシシッピ州を襲い、一帯を破壊した。連邦政府は、ハリバートン社の子会社であるKBRに、被害を受けた当地の海軍基地の掃除と破壊された部分の再建築などの仕事を発注した。(ハリバートン社については、またいつか詳しく説明させていただきたいと思うが、ここで簡単に触れさせていただくと: 同社は、チェイニー副大統領が、 副大統領に就任する直前まで社長を務めていた会社である。政府が企業に仕事を発注する際、競争入札という手段をとらなければならないという規則があるが、 ハリバートン社はチェイニー副大統領というコネがあるため、競争入札なしで、ブッシュ政権からの発注を独占的にものにしている。)
KBRが受注した海軍基地の掃除と再建築というプロジェクトの為に、KBRの下請け業者はメキシコから労働者達を雇った。マルティネスもその1人だった。
「(海軍基地にいる間、)私達労働者は、1日2度、時には1日1度しか、食事を与えられませんでした。」マルティネスは言う。
「彼ら(KBRの下請け業者)は私達に、時給7ドルと、食事と住む場所を約束しました。」メキシコから雇われたもう 1人の労働者、17歳のシミトゥリオは言う。「でも、実際彼らは私達に何も与えてくれませんでした。食べ物さえも全く与えてくれなかった。私達は5日間 クッキーを食べていました。クッキーだけです。」
また、マルティネスやシミトゥリオ達は、仕事中に怪我をしようと、有毒こけなどが原因と考えられる病気になろうと、医療手当ても受けさせてもらえなかった。
それだけではない。更に彼らは、何週間分もの仕事の賃金も払われないまま、海軍基地から放り出された。わざわざメキシコから来た彼らは、アメリカの地で、働くだけ働かされた後、一文無しで飢えたホームレスとなってしまったのである。
マルティネス達を雇った下請け業者は、「我々はKBRから2カ月も払ってもらっていない。だから、彼ら(メキシコ人労働者達)に出て行ってもらうより他なかった。」と言う。
連邦政府から発注を受けた企業は、雇用した労働者に、「世間一般で払われている額」の賃金を払うことを、連邦法で義 務付けられている。また雇用主は、従業員を雇う際に、その従業員がアメリカで合法的に就労する資格のあることを証明する書類を記入させなければならない。 ところがブッシュ大統領は、緊急大統領令により、連邦政府からの受注でカトリーナの後始末をする企業を、これらの法律や規則から免除させた。これが、今回 のように、KBR(とその下請け業者)がメキシコから労働者を連れてきた挙句、賃金も払わないという行いを許す土台作りとなってしまった。
しかしKBRは、「我々はメキシコから不法就労者を雇ったりしない。」と主張している。
マルティネスやシミトゥリオのような労働者達と、KBR及びその下請け業者の間には、労働契約書なるものが存在しな
い。つまり、彼らがメキシコからKBRに雇われてきたのだという証拠がない。だから、彼らがいかに虐待されて放り出されようと、然るべく政府機関に苦情を
入れたり、訴訟を起こしたりすることは難しい。移民の権利を擁護する団体が、未払いの賃金を労働者達に払うようにKBRや下請け業者に対して行動を起こし
ている。しかし、多くのメキシコ人労働者達は、KBRや下請け業者の不条理で非人道的な行為に屈せざるをえないと思っているようである。
Gulf Coast Slaves
Salon, November 15, 2005
昨日、アメリカ各地でローカルの選挙が行われた。カリフォルニアでは、数都市で市長選があったのと、州法案・市条例案を承認するか否かについての投票があった。
さてサンディエゴの市長選では、ドナ・フライ民主党市議会員が、共和党から出馬した元警察官、ジェリー・サンダース氏に敗れてしまった。サンディエゴは、軍事基地があり、軍事産業が盛んな土地柄ということもあり、リベラルで民主党派のカリフォルニア州にあっては珍しく、共和党派の街である。市長も代々共和党が歴任してきた。それに伴い政治腐敗が巣くっており、その為に今、市は様々な問題を抱えている。だから、今回は改革派のフライ議員が市長に選ばれるべきだった。ところが共和党依然強し、(といっても僅差ではあるが、)サンダース氏が選ばれてしまった。
問題は、投票者が立候補者の見解や政策方針をよく分かっていないということだ。先日、サンディエゴで小規模なビジネスを経営するアマンダという女性と立ち話をしたのだが、彼女はサンダース氏に投票するという。理由は、「フライ議員より、サンダースが市長としてよく見える」かららしい。(フライ議員はサーファーなので、確かに日焼けがひどいのであるが。)
アメリカでは今、地方政府による収用権の濫用が目立っている。収用権とは、公共使用目的のものを建築する為に、建築予定地域において私的に所有されている土地・住宅・ビジネスを、市が強制買収する権利だ。元来、この「公共使用目的のもの」とは、学校、病院、高速道路などを意味していた。しかし最近は、市が、大企業の拡張計画を実現させる為に、家又は小ビジネスの所有者から土地を安価で奪い、大企業に渡すのがトレンドとなっている。市は、「大企業の拡張は市に多額の税金をもたらし、市民の福祉につながる」と主張する。しかし、調査によれば、土地を一般人や小ビジネスから取り上げて大企業に譲渡した所で、市への全体的な納税額が増えることは、まずないそうである。しかも、土地をもらった後で、拡張計画を中止する大企業も多い。
大企業を代表するロビー団体に魂を売り、収用権を濫用しているのは、サンディエゴ市も例外ではない。サンディエゴで、個人ビジネス又は小規模のビジネスを経営している人たちは、いつ市に取り上げられるか心配しなくてはならない。そんな状況下で、市の収用権濫用を公然と批判し続けてきたのは、フライ議員ただ1人だった。「市が、私的所有物の拡大を援助する為に、他の私的所有物を取り上げるのは、正当な収用権行使ではありません。」と、彼女は叫び続けてきた。一市議会員としてできることは限られているが、彼女が市長になれば、収用権濫用を止めることも可能だったのだ。
私がこのことを指摘すると、アマンダはびっくりした様子で、「フライ議員がそのような立場にあるとは知らなかった。それなら、私はフライ議員に投票するわ。」と言う。そう、市の収用権濫用問題は、小ビジネスを経営するアマンダにとっては重要な問題なのだ。にも関わらず、フライ議員が収用権濫用を無くそうと奮闘している唯一の人物であることを彼女は全く知らず、「見かけ」でサンダース氏を選ぼうとしていた?
私はアメリカの市民権を持っていないので、選挙権がなく、偉そうなことは言えないが、選挙権のある方々には、候補者が何を言っているか、何をしようとしているか、誰を代表しているのか(大企業なのか、サンディエゴ市民なのか?)、どうかよく見極めてから投票していただきたい、と思う。
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サンディエゴのダウンタウンには、地元の住民・観光客共にとても人気のあるお洒落なカフェがあった。このカフェは、アフガニスタンからの移民の親子が、10年以上前にオープンし、苦労して、「ダウンタウンの人気スポット」に成長させたものだ。
ところが2年前のこと。大手ホテル、マリオットが、拡張計画を市に提出した。この拡張計画を承認することは、市が、このカフェと一帯の土地を取り上げ、マリオットに与えることを意味する。市議会は7対1でこの拡張計画を承認した。反対票を投じたたった1人の議員は、ドナ・フライ議員だ。
カフェを泣く泣く空け渡した経営者のアーマッドさんは、最近の地元の新聞のインタビューで、こう述べている。「気分的にはまだ落ちこんでいますが、前を向いて生きていくしか仕方ない。ドナ・フライ議員が市長になるのを楽しみにしています。」
一方マリオット・ホテルだが、拡張計画は宙に浮いたようで、カフェがあった辺りには、今だなんの進展も見られない。
そして、フライ議員は市長に選ばれず。
むなしいことだ。
11月2日、92歳で亡くなったローザ・パークスさんの告別式が行われた。
ローザ・パークスさんは、アメリカの公民権運動の目玉、モンゴメリー・バス・ボイコット運動の発端となった人だ。
1950年代、アラバマ州モンゴメリー市では、他の南部の各都市と同様、人種隔離政策が施行されていた。公共の場所 は全て、白人用と非白人用に分けられていた。バスは、白人用のバスと非白人用のバスを別々に走らせるのが経済的ではなかったため、席を人種別に指定すると いう方法がとられていた。前方の数列の席は白人用、後方の数列の席はそれ以外の人種用。その中間の席は、白人が座っていない時は、白人以外の乗客が座れる ことになっていた。(乗客のほぼ4分の3をアフリカ系アメリカ人が占めていた。)白人が沢山乗ってくると、中間席に座っている白人以外の乗客は、後方の席 に移るか、立つか、またはバスを降りなければならなかった。
1955年12月のこと。デパートで仕立て直しの仕事をしていたローザさんは、仕事の帰りにバスに乗り、中間席に座った。そのうち白人の乗客が増えてきたので、バスの運転手が、中間席に座っていたアフリカ系アメリカ人の乗客に後方に行くように指図した。
他のアフリカ系アメリカ人の乗客はみな後方に移動したが、ローザさんは座ったまま、立ち上がろうとしなかった。運転手は、「なぜお前は立たないんだ。」と詰め寄った。ローザさんは、「私が席を立つ必要はないと思います。」と返した。
この時の心境を、後にローザさんはこう語っている:「私はあの時、人間として、アラバマ州モンゴメリーの市民とし て、どのような権利を持っているのか確かめる必要があったのです。」「(通説では、)私は仕事で疲れていたから席を立つのを拒否した、と言われています が、私は身体的に疲れてはいませんでした。(人種差別に)屈することに疲れていたのです。」
席を立たなかったローザさんは逮捕され、モンゴメリーの条例に違反した罪で罰金を払わされた。
この事件が引き金となり、モンゴメリーのアフリカ系アメリカ人によるバスのボイコット運動が始まった。このボイコット運動を率いていたのが、マーティン・ルーサー・キング Jr 牧師だ。ボイコットは381日間続き、バスの経営者達に大きな経済的打撃を与えた。また、この運動は他のアフリカ系アメリカ人の公民権運動を誘発した。これら一連の公民権運動によって、南部における人種隔離政策は終焉を迎えることとなる。
ローザ・パークスさん、キング牧師、そしてフレッド・コレマツさんのように、正義の為に勇気を持って闘った方々がいるから、今、私達は人間として普通の生活を送れることができる。彼らには感謝のしようもない。
一方で、南部では人種隔離政策の余韻が今も根強く残っている。2、3ケ月前には、大手食品会社タイソンの運営するアラバマ州の養鶏所において、従業員用トイレのうち、改装されたばかりのトイレは「白人の従業員用」と指定されていたことが発覚したばかりだ。(この為、タイソンはアフリカ系アメリカ人の従業員達から訴訟を起こされた。)ローザさんがバスの席を立つことを拒否してから、ちょうど50年。今でもこのようなことが南部で起こっているなんて、と、彼女は天国であきれているに違いない。
資料:
Rosa Parks, Wikipedia
カリフォルニア州議会は、アメリカの州議会としては初めて、同性結婚を許可する法案を可決した。しかし、シュワルツェネガー知事が署名しなかったので、この法案は法律にならず、そのままお蔵入りとなった。
カリフォルニアでは、現在平行して同性婚を合法化させる為の訴訟が展開されている。下級裁判所が「同性婚を禁止した州法は州の憲法違反である為、無効にすべき」という判決を下し、同性婚反対派がその判決を不服として上告している。シュワルツェネガー知事が同性婚を許可する法案に署名しなかったのは、彼曰く、その訴訟の最終判決を待った方がよいからなのだそうだ。
ところで真実はこうらしい:共和党支持者の怒りを恐れて法案に署名しなかったものの、「同性婚に反対」と大っぴらに言うと、ゲイ・レズビアンや彼らの権利を擁護する人達から非難の矢が飛んでくることが分かっているので、「裁判所の判決」を楯に身を隠した。つまり、彼は、弱虫なのだった。
シュワルツェネガー知事自身は、ゲイに対して悪い感情は持ってないはずだ。ゲイのポルノ雑誌のモデルをしたくらいだから(警告:ページ中ほどにヌード写真あり)。
Schwarzenegger Vetoes Bill Legalizing Gay Marriage
Los Angeles Times, September 29, 2005
「同性結婚を禁じたネブラスカ州憲法の改正条項は、国の憲法に違反する。」連邦地域裁判所が判決を下した。ネブラスカは、2000年にこの改正条項を州憲法に組み入れたばかりだ。
現在までに、3つの州の州裁判所が、「同性結婚を禁止した婚姻法は、平等な法の保護(又は法の手続き)を州民全てに保障する州憲法の条項に違反している」と判決を下している。
しかし、連邦裁判所が、「同性結婚を禁止する州憲法は、平等な法の保護を国民全て保障する合衆国憲法の条項に違反する」と判決を下したのは初めてだ。
この連邦地裁の判決は、州憲法の名の下に、夫婦と同じ法的権利を同性カップルに与えていないことが違憲である、と言っているもので、同性結婚を認めよ、と命令しているものではない。
ネブラスカ州において、夫婦には付与され、同性カップルには付与されていない法的権利の例は次の通り:
- 仕事を休んで病気の配偶者の介護をする権利。(有給介護休暇)
- 重体の配偶者を病院に見舞う権利。
- 死亡した配偶者の葬式を行う権利。
- 配偶者を自分の医療保険の被保険者に指名する権利。
- 配偶者として、政治のプロセスに参加する権利。
- 両親としての権利。
ただ、カリフォルニア州、バーモント州、コネティカット州においては、婚姻は男女間のみに存在すると州法で定めているものの、同性カップルにも、シビル・ユニオン(Civil Union、2人の市民の共同生活体)やドメスティック・パートナー(Domestic Partner、家庭を築く為のパートナー)といった婚姻とよく似た制度を授けている。シビル・ユニオン(バーモント州・コネティカット州)又はドメスティック・パートナー(カリフォルニア州)の手続きを済ませた同性カップルは、夫婦に付与されている法的権利のほとんどを与えられる。夫婦と完全に同じ権利が与えられているわけではないので、こういった制度も、それはそれでまた問題があるのは事実だ。しかし、こういった制度が欠如しているよりはましなのであって、制度を導入しているこれらの州では、少なくとも、同性カップルにできるだけ夫婦と同じ法的保護を与えようとする姿勢が見られる。
一方、ネブラスカの州憲法改正条項は、同性カップルに対しては、婚姻どころか、シビル・ユニオンやドメスティック・パートナーのような制度も許可しない、と断言している。つまり同性カップルにとって、夫婦と同様の法的保護を受ける手段は皆無、ということだ。
今回の連邦地裁の判決は、国の憲法で保障されている平等に法的保護を受ける権利を、同性カップルであるという理由だけで彼らから奪うな、と命令しているものである。この命令に従うために、同性結婚を許可するか、それとも同性カップルの為にシビル・ユニオンやドメスティック・パートナーのような制度を設けようとするか.....それは、ネブラスカの立法機関の判断による。ただ、連邦地裁の判決に不服なネブラスカは、連邦控訴裁に上訴すると言っているので、この訴訟の最終結論はまだまだ先になりそうだ。
U.S. Judge Rejects Neb. Gay-Marriage Ban
Associated Press, May 13, 2005
シュワルツェネガー知事の発言が、また波紋を呼んでいる。彼は、ミニットマンを賞賛し、「カリフォルニアに来れば歓迎する。」と述べたのだ。
ミニットマンを少し説明しよう。
1ヶ 月前になるが、反外国人/反移民の右翼的な人々が集まって、「ミニットマン・プロジェクト」なるものを計画した。ミニットマンとは、もともとは、武器と戦 術の訓練を受け、市民革命で闘って功績を収めた一般人からなる武装集団のことを指す。(と思う。間違っていたらごめんなさい。)「ミニットマン・プロジェ クト」は、アメリカ南端の国境を守ろう、というプロジェクトだ。
祖国で貧困に窮しており、家族を食べさせる為、又はより良い人生を送る為 に、国境を渡ってアメリカにやって来るメキシコ人は後を絶たない。もちろんアメリカには不法滞在しているわけだが、彼らは生活がかかっているので、そんな ことは言っていられない。彼らは安い賃金で喜んで、農場や建築現場で働いたり、レストランで下働きをしたりする。だからアメリカの雇用主もどんどん彼らを 雇う。需要と供給が見合っているのだ。
右翼アメリカ人達は、このメキシコ人達の存在が気に入らない。「不法滞在している彼らが、国や州の 社会保障サービスをただで使用していることが許せない。」という。しかし実際は、調査で明らかになっているように、不法滞在しているメキシコ人のほとんど はちゃんと税金を国と州に払っている。また言うまでもないが、その労働と消費によって彼らはアメリカの経済に大きく貢献している。
が、そういった細かな事実には、右翼アメリカ人達は耳を貸さない。先ほども述べたが、彼らは元々「反外国人」であり、外国人全てを相手にすることが不可能な為、「不法滞在しているメキシコ人」にターゲットを絞っただけなのである。
彼らは、ミニットマン・プロジェクトの名の下、アリゾナ州のメキシコ沿いの国境に集まって、不法に国境を渡ってくるメキシコ人を捕まえることにした。インターネット上の呼びかけに、アメリカ中から右翼達が国境沿いに結集。(写真はこちら:
http://www.minutemanproject.com/photos/photos_2005apr30_wrapup.html )
ミニットマンというだけあって、みな銃を持参した。このプロジェクトは1ヶ月間行われた。
ミ ニットマンに対して、世論は厳しかった。国境沿いの市の市長は「外国人嫌いの者達のクレイジーなアイデア」と言った。普段は不法滞在者に対していい感情を 抱いていない一般人たちでさえも、「レッドネック(米国南部に住む無知で無学な白人。【軽蔑語】)が集まって、お遊びでメキシコ人狩りをしているよう だ。」と眉をひそめた。 外国人が苦手と評判のブッシュ大統領でさえも、「問題を大きくするだけだ。」と言った。
ブッシュ大統領の言うこ とが正しかったことはあまり無いが、ミニットマンに関しては、ぴたりと的中した。ミニットマン達は、国境沿いに張られたアラームを誤って鳴らし、国境パト ロールを出動させてしまったり、記念写真や記念ビデオを撮影する為にメキシコ人を拘束したりした。(他人を拘束するのはどんな状況でも違法。)「ミニット マンは私たちの仕事の邪魔をしている!」と国境パトロール隊達はかんかんだった。
そして4月末、ミニットマンは成功を宣言し、アリゾナ州におけるプロジェクトを終了した。前述の市長の反応はこうだ。「なにが成功だ。彼らはアリゾナに国際的な恥をかかせただけだ。」
さて批判にも負けず、ミニットマンは、「今度はカリフォルニア州におけるメキシコとの国境を守る為に、サンディエゴに向かう。」と宣言した。そんな時だ。シュワルツェネガー知事がミニットマンの功績を讃え、「彼らがカリフォルニアに来れば歓迎する。」と言ったのは。
このミニットマンの支持に対し、知事は強い非難を浴びた。
知 事は、少し前にも口をすべらせて波紋を呼んだ。ロサンゼルスのラテン系のラジオ・ステーションのビルボードに「ロサンゼルス、カリフォルニア」の代わりに 「ロサンゼルス、メキシコ」と書かれてあるのを見て、知事は機嫌を損ねた。そして、「アメリカの国境を閉鎖すべきだ。」と述べたのだ。慌てて「私は英語が うまくないからあのような発言になってしまった。」と言い訳したのだが、ラテン系の人々の知事に対する不信感を消すことは出来なかった。
ある政治評論家によれば、知事は、州内の超保守派・極右派に受けようとしてこのような発言を行ったのだろう、ということだが、移民の多いカリフォルニアでこのような発言を繰り返すのは、自殺行為としかいいようがない。知事の支持率は、既に40%まで落ちている。
ミニットマン支持発言の波紋が大きくなる一方、知事は言い訳に必死だ。「もちろん私は移民が増えることには大賛成だ。私自身、移民なのだから。私は移民政策のチャンピオンだ。ただ不法滞在などの不法な行為は許可できない、と私は言っているだけなのだ。」
ちなみに、オーストリアからアメリカに渡ってきた時、労働許可証を持っていなかったシュワルツェネガー氏は、不法就労した過去を持つ。
Polls Push Governor to the Border
Los Angeles Times, April 30, 2005
フレッド・コレマツ氏が亡くなった。コレマツ氏は、アメリカの人権運動の歴史において、最も重要な人物の一人である。
第二次世界大戦中、米政府は、親又は先祖に日本人を持つという理由のみで、ジャパニーズ・アメリカン達を砂漠の真ん中に建てた収容所に強制収容した。必然的に、彼らのほとんどが家、財産、全てを失った。
コレマツ氏は、自分は強制収容に値するような悪いことは何もしていない、と、収容所に行くのを拒んだ。その為に彼は逮捕され、抑留された。
コレマツ氏は、政府がこのようなことを自国の人間に対して行うのは憲法違反だ、と信じ、政府を訴えた。この訴訟は、連邦最高裁判所まで行ったが、1944年、コレマツ氏の敗訴で終わった。
コレマツ氏は諦めなかった。正義感の強い弁護士達の助けもあって、40年後、彼は再び同様の訴訟を起こした。そして 1983年、ジャパニーズ・アメリカン達の収容は、憲法違反であったとついに判決が下されたのだ。政府は、戦時中に収容された人々に正式な謝罪を述べ、賠 償金を払った。
その後もコレマツ氏は、人権保護活動家として活躍。 1998年には、国民に授けられる栄誉勲章のうち最も崇高であるとされる「自由の勲章」をクリントン大統領から与えられた。
彼は最近も、9-11テロ事件以後のアラブ・アメリカン達の不当な扱い方について、政府を強く非難していた。
コレマツ氏はカリフォルニア州オークランドの出身。同州ラークスパーという街にある娘さんの自宅にて息を引き取った。86歳であった。
ちなみに、コレマツ氏を敗訴に追いやった1944年の連邦最高裁の判決は、アメリカの司法の歴史に残る汚点である、と現代ではみなされている。
Fred Korematsu, 86, Fought World War II Internment, Dies
Los Angeles Times, Mar. 31, 2005
以前ニューヨーク州の下級裁判所が、同性間の結婚を禁じた州法は州憲法違反であると判決を下したことを書いたが、昨日カリフォルニア州の下級裁判所も同様の判決を下した。同性結婚合法化に反対する団体は上告するつもりだが、まずはゲイ・レズビアンの人々と、彼らの権利を守る為に戦っているサンフランシスコのギャビン・ニューサム市長の勝利だ。
カリフォルニア州の婚姻法も、他州の婚姻法と同じように「結婚は男女間に存在する契約」であると定めている。同性カップル達とニューサム市長が、この婚姻法を無効にしてもらうべく訴訟を起こしたのだ。
クレイマー裁判官は、自分の選んだ相手と結婚する権利は、州民全てが持つ基本的権利であると断言。この権利を同性カップルから奪う婚姻法は、州憲法の「法の平等な保護を州民に保障する条項」に違反していると判決を下した。
被告のカリフォルニア州及び同性結婚合法化反対派は、結婚を男女間に限らせる婚姻法を施行することにより、州は結婚の伝統を維持しているのだ、と主張した。しかし裁判官はこの主張を却下。「1948年、異人種間の結婚を禁止した婚姻法を正当化する為に州が使った言い訳も、『結婚の伝統を守る為』だった。」と述べた。(異人種間結婚を禁じた婚姻法は、違憲であるとして、1948年に州最高裁から無効にされた。)
同性結婚反対派はまた、婚姻法は子供を作るという結婚本来の目的を保持する役目も果たしている、とも主張。クレイマー裁判官はこの理論も退けた。「人は子供を作る為に結婚するのではない。」
この同性結婚を巡る戦いは州最高裁までもつれこむだろう。成り行きを見守っていきたい。
Court Invalidates California's Same-Sex Marriage Ban
San Francisco Chronicle, Mar. 14, 2005
コロラド州最高裁判所が、殺人犯の死刑判決を覆した。この死刑判決は、陪審員達が聖書に頼った結果出した結論であることが発覚したからだ。
数年前、殺人を犯した男性が裁判に掛けられた時、この男性に死刑を与えるべきかどうかを審議中だった陪審員達は、聖書に決断の導きを求めた。そして、聖書の「目には目を。歯には歯を。」という一節を読んだ後、陪審員達は死刑判決を下した。
裁判中に提示された証拠及び法律以外のものを考慮に入れて決断を下さないよう厳しく指示されていたのにも関わらず、だ。
州最高裁は、陪審員達のとった行動が不適切として、彼らの下した死刑判決を無効にしたのであった。
State Justices Overturn Killer's Death Sentence
Rocky Mountain News, Mar. 29, 2005
ブッシュ政権下のアメリカは、国際法や国際協定をことごとく軽視しているが、今回また一つ国際協定から身を引くこととなった。ウィーン領事関連条約の選択議定書だ。
ウィー ン領事関連条約は、条約採択国が外国人を何かの容疑で逮捕、抑留した際に、その抑留者が自国の領事館に相談できるように取り計らわなければならない、と定 めている。外国人を抑留した国がこの条約を守らなかった場合の解決方法を取り決めているのが選択議定書だ。同議定書によれば、抑留者の母国がクレームを提 出し、国際正義裁判所に裁定してもらうことになっている。
この選択議定書から身を引いたということは、こういうことである:
アメリカが外国人を抑留し、領事館に連絡する機会を与えなくても、その抑留者の母国の政府は、アメリカに対して何の措置も取れない。
もちろん反対に、アメリカ人が外国で逮捕、抑留された場合、米政府は抑留した国に対して何の措置も取れない、ということでもある。つまりアメリカは、自国の司法手続きに他国の首を突っ込まさせない為に、他国で抑留される自国の人間も見捨てることにしたわけだ。
ア メリカがこのような決断に至った理由がある。実はつい先日、選択議定書にのっとって、メキシコがアメリカに正式にクレームを出した。アメリカで死刑判決を 受けて抑留されている51人のメキシコ人が、メキシコ領事館に連絡させてもらえなかったそうなのだ。これを受けてブッシュ政権は、各州の裁判所に、この 51人のメキシコ人のそれぞれのケースについて改めて聴聞手続きを行うように命じた。これでもうこりごりだったのだろう。それから一週間も経たないうち に、ブッシュ政権は選択議定書からの脱退声明を発表したのだ。
外国で逮捕、抑留された場合、その国の法律、言語などに対する理解不足で、 抑留者は不利な立場に陥る。抑留者が無実の罪で誤って逮捕された場合はなおさらだ。そんな抑留者を助ける役目を果たしていたのが抑留者の母国の領事館だ。 アメリカで逮捕された場合、もうその助けも期待できないということだ。
U.S. Strips Detainees of Key Protections
Reuters, Mar. 11, 2005