コロラド州最高裁判所が、殺人犯の死刑判決を覆した。この死刑判決は、陪審員達が聖書に頼った結果出した結論であることが発覚したからだ。
数年前、殺人を犯した男性が裁判に掛けられた時、この男性に死刑を与えるべきかどうかを審議中だった陪審員達は、聖書に決断の導きを求めた。そして、聖書の「目には目を。歯には歯を。」という一節を読んだ後、陪審員達は死刑判決を下した。
裁判中に提示された証拠及び法律以外のものを考慮に入れて決断を下さないよう厳しく指示されていたのにも関わらず、だ。
州最高裁は、陪審員達のとった行動が不適切として、彼らの下した死刑判決を無効にしたのであった。
State Justices Overturn Killer's Death Sentence
Rocky Mountain News, Mar. 29, 2005
ブッシュ政権下のアメリカは、国際法や国際協定をことごとく軽視しているが、今回また一つ国際協定から身を引くこととなった。ウィーン領事関連条約の選択議定書だ。
ウィー ン領事関連条約は、条約採択国が外国人を何かの容疑で逮捕、抑留した際に、その抑留者が自国の領事館に相談できるように取り計らわなければならない、と定 めている。外国人を抑留した国がこの条約を守らなかった場合の解決方法を取り決めているのが選択議定書だ。同議定書によれば、抑留者の母国がクレームを提 出し、国際正義裁判所に裁定してもらうことになっている。
この選択議定書から身を引いたということは、こういうことである:
アメリカが外国人を抑留し、領事館に連絡する機会を与えなくても、その抑留者の母国の政府は、アメリカに対して何の措置も取れない。
もちろん反対に、アメリカ人が外国で逮捕、抑留された場合、米政府は抑留した国に対して何の措置も取れない、ということでもある。つまりアメリカは、自国の司法手続きに他国の首を突っ込まさせない為に、他国で抑留される自国の人間も見捨てることにしたわけだ。
ア メリカがこのような決断に至った理由がある。実はつい先日、選択議定書にのっとって、メキシコがアメリカに正式にクレームを出した。アメリカで死刑判決を 受けて抑留されている51人のメキシコ人が、メキシコ領事館に連絡させてもらえなかったそうなのだ。これを受けてブッシュ政権は、各州の裁判所に、この 51人のメキシコ人のそれぞれのケースについて改めて聴聞手続きを行うように命じた。これでもうこりごりだったのだろう。それから一週間も経たないうち に、ブッシュ政権は選択議定書からの脱退声明を発表したのだ。
外国で逮捕、抑留された場合、その国の法律、言語などに対する理解不足で、 抑留者は不利な立場に陥る。抑留者が無実の罪で誤って逮捕された場合はなおさらだ。そんな抑留者を助ける役目を果たしていたのが抑留者の母国の領事館だ。 アメリカで逮捕された場合、もうその助けも期待できないということだ。
U.S. Strips Detainees of Key Protections
Reuters, Mar. 11, 2005
司法の世界を舞台に小説を書くジョン・グリシャム氏。 ザ・ファーム("The Firm" トム・クルーズ主演)、依頼人 ("The Client" スーザン・サランドン主演)、レインメーカー("The Rainmaker" マット・デイモン主演)、ニューオリンズ・トライアル("Runaway Jury" ジョン・キューザック主演)など、彼の小説を原作にした映画は多い。
そんなグリシャム氏が、初めてノンフィクションを書いているらしい。冤罪で死刑判決を受けたオクラホマの男性、ロナルド・ウィリアムソンさんの話だ。
ウィリアムソンさんは、1986年に女性をレイプし殺害した疑いで拘束された。無罪を主張したが、1988年に罪が確定、死刑を言い渡された。ウィリアムソンさんの弁護士は、何度もオクラホマ州裁判所にDNA鑑定を要請したが、却下された。
こ の弁護士の訴えを聞き入れた連邦地域裁判所が、DNA鑑定を命じた。鑑定の結果、真犯人が別に存在し、ウィリアムソンさんは無実であることが確証された。 なんと死刑執行日の5日前のことである。ウィリアムソンさんは刑務所から解放されたが、禁固されてから既に13年の月日が経過していた。
ちなみに、DNA鑑定の結果分かった真犯人とは、ウィリアムソンさんが犯行を犯しているのを見た、と証言した男だった。オクラホマ州検察側は、この男を最も信頼できる目撃者であるとみなしていた。
ウィリアムソンさんは昨年病気の為に亡くなった。51歳だった。
Grisham Writing a Non-Fiction Work
Associated Press, Mar. 10, 2005
=======================================
アーノルド・シュワルツェネガー氏にとって、どこに行っても熱心なファンに追いかけれらたのはもう昔の話。カリフォルニア州知事となった今は、どこに行っても自分に対して抗議するプロテスター達に追いかけられる。
シュ ワルツェネガー知事は、カリフォルニア州の赤字を埋める為に州政府の福祉関連の予算を大幅に削減。病院や学校への経費もカットした。また、州政府の腐敗を 一掃するという公約で知事になっておきながらも、前知事以上に熱心に企業から献金を集め、企業に好意的な政策を執っている。更に女性に対する差別的な発言 が度重なっている。
そんなシュワルツェネガー知事に失望したカリフォ ルニア州民は少なくないが、特に彼を目の敵にしているのが看護婦達と消防士達だ。知事が、病院に最低数の看護婦の雇用を義務付ける州法を無効にし、消防士 などの公務員の退職金制度を民営化させようとしているからだ。
シュ ワルツェネガー知事がどこに行こうと、看護婦や消防士は待ち受けてい る。サクラメントで映画「Be Cool」のプレミアに招待された知事は、敷かれた赤じゅうたんの上を歩いて映画館に入るはずだったのが、赤じゅうたんの脇にずらりと並ぶ看護婦達の存在 を確認し、こそこそと裏口から映画館に入った。サンディエゴで献金集めの為にパーティーに出席していた時も彼らはいた。ロサンゼルスのブレントウッド地区の彼の自宅前にも。
し かもカリフォルニア内だけではない。ニューヨークで行われた献金集めパーティーにシュワルツェネガー知事が出席した時も、彼らはいたのだ。消防士達はわざ わざカリフォルニアから飛んだ。一方看護婦達は、ニューヨークの看護婦達にコンタクトを取って、現場に向かってもらっ た。
ロサンゼルス・タイムズ紙によると、看護婦や消防士達は、知事の公的行事参加から私的なパーティー出席まで、スケジュールを調べつくしているらしい。
シュワルツェネガー知事は、内心は一物あるだろうが、表面上は彼らを無視しているようだ。ストリート上における知事対看護婦・消防士の戦いは、忍耐の強い方が勝ち、という感じだ。
ちなみに看護婦達は、知事に対し訴訟も起こしている。先週州の下級裁判所は、知事が病院に最低数の看護婦の雇用を義務付ける州法を無視したことは、知事の権限を越えた行動である、と判決を下した。もちろん知事は上告するつもりだが、裁判所での戦いにおいては、まずは看護婦達が最初の勝利を収めたということだ。
A New Kind of Crowd for Governor
Los Angeles Times, Mar. 9, 2005
ヨー ロッパ諸国は、アメリカが未だに死刑を行っていることにとまどいを感じている。ヨーロッパでは、死刑は根本的人権尊重の理に反する野蛮な行為とみなされて いるからだ。だからEUの加盟条件にも、死刑制度を施行していないことが織り込まれている。EU加入を希望しているトルコは2年ほど前に死刑を廃止した。 EUは、アメリカへも死刑制度廃止を呼び掛けている。
アメリカが死刑を廃止するのは恐らくまだまだ先の話になるだろうが、この度18歳未満の犯罪者に対する死刑は止めることになった。
ア メリカでは、20州ほどで今も18歳未満の者に対する死刑が許可されている。子供を処刑しているのは、世界中で実にアメリカだけなのである。 (注:15 歳以下の児童の死刑はアメリカでも禁止されている。) 3日前、連邦最高裁は、18歳未満の者に対する死刑は、合衆国憲法改正条項第8条で禁止されている 「残酷で普通ではない刑罰」に相当するとして、「違憲である」と判決を下した。多数決の内訳としては、9人の裁判官のうち、5人が「違憲」で4人が「合 憲」という意見だった。
多数派を代表して判決を述べたケネディ裁判官は、 何が「残酷で普通ではない刑罰」とみなされるかという決断を下すにあたり、国際社会における法的傾向を考慮に入れたことを明らかにした。同裁判官は、子供 の処刑を禁止している国際社会において、アメリカが一人だけ孤立していることを強調。EU及びヨーロッパのノーベル平和賞受賞者から連邦最高裁に提出され た、子供の死刑に関する意見書を重視したと思われる。
これに対し、少数派を代表するスカリア裁判官は、アメリカ国内の法律が合憲かどうかを決めるのに、外国の法律に触れる必要性はない、と反撃。保守的なスカリア裁判官は、外国の法律的傾向及び道徳的傾向が連邦最高裁裁判官の下す判決に影響を及ぼすことを、殊の外嫌っていることで知られる。少数派の一人、オコナー裁判官は、 18歳未満の者に対する死刑が「残酷で普通ではない刑罰」というのには賛成できないものの、国際社会の法的傾向を考慮に入れて判決を出すことについては、 問題なし、との見解を示した。そんなオコナー裁判官にスカリア裁判官は言い放った。「我が国独自の原理を追及するのか、外国にただ追従していくのか、どち らかにしろ。」
連邦最高裁は、2年ほど前にも精神病を持つ者への死刑は違憲であると判決を下している。今回の判決と合わせて考えると、ア メリカにおける死刑の適用範囲が徐々に狭まれていっているようだ。時間はかかるだろうが、そのうち死刑自体も廃止されることになるだろう。それまでは、ア メリカに死刑制度廃止を促すヨーロッパ諸国と、外国の影響を押し止めようとするスカリア裁判官の戦いは続きそうだ。
Supreme Court Abolishes Juvenile Death Penalty
Reuters, Mar. 1, 2005
Man Can Sue for Distress over Surprise Pregnancy, But Sperm Hers to Keep
Associated Press, Feb. 24, 2005
以 前交際していた女性が、男性に知らせずに彼の精子を使って妊娠していたことに関し、イリノイ州の上級裁判所は、「男性は精神的苦痛を与えられたとして女性 を訴えることができる」と判決を下した。しかし、「精子を盗み取った、として彼女を訴えることはできない。一旦彼女に届いた精子は彼女のものだからだ。」
原 告リチャード・フィリップスさんと被告シャロン・アイアンズさんは二人とも医者である。6年前、二人は交際をしていた。ある日、二人がオーラル・セックス を行った後、アイアンズさんはフィリップスさんに内緒で彼の精子を保管した。そしてその精子を使って妊娠した。フィリップスさんがそのことを知ったのは、 それから2年後。子供の認知を求めてアイアンズさんに訴えられた時だ。DNA鑑定でフィリップスさんが子供の父親であることが証明された。彼は養育費 800ドルを毎月アイアンズさんに支払うように裁判所から命令された。
フィリップスさんは、窃盗及び詐欺(彼の精子を騙し取ったこと)、そして彼に精神的苦痛を与えたこと、を理由にアイアンズさんに対し訴訟を起こした。下級裁判所はフィリップスさんの訴えを退け、彼は上告。
上 級裁判所は、確かにアイアンズさんの行為は欺瞞的だったと認めた。「普通の人間なら、オーラルセックスが妊娠という結果をもたらすとは予想だにしない。そ のオーラルセックスを行って得た精子を使い妊娠するのは、通常では考えられないやり方であり、(フィリップスさんにとって)大変な状況を生み出した。」 よって、精神的苦痛を与えられたとする彼の訴えはそのまま続行されるべき、と判決を下したのだ。
しかし同裁判所も、窃盗と詐欺に関しては フィリップス氏の訴えを退けた。アイアンズさんは、フィリップスさんの精子を騙し取ったのではない、とする下級裁判所の判決に同意したのだ。「(オーラル セックスにより)精子が女性に届いた時、その精子の所有権利は贈与者(男性)から受贈者(女性)に譲渡されたのである。その精子を後で男性に返却するなど という契約を、両者間で交わした わけでもない。よってその精子は女性への完全な贈与品とみなされる。」
私は彼の作品を読んだこと無いんです(恥)が、彼の作品を元にした映画は大好きです。「法律事務所」も「評決の時」も、私は映画しか観てませんが、映画も原作も、とても優れた作品だったと評判ですよね。
また新たに読まれたら、ご感想お聞かせ下さい。 私も是非読んでみたいと思っています。