今週の月曜日と火曜日にPBSにて放映された「Bush's War」は、対イラク戦争を巡るブッシュ政権の内部闘争についてのドキュメンタリーだ。
2001年の9-11テロ事件直後、チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官(当時)を筆頭とするネオコン派は、表面上ではオサマ・ビン・ラーディンとアル・カイーダに対する攻撃に焦点を当てているようで、実は裏では、同事件を利用してイラクを攻撃できないものか、と、対イラク作戦を可能にする為の作戦を既に練り始めていた。しかし、テロ事件とは何の関係もないイラクへの攻撃に反対する者もブッシュ政権内にいた。「Bush's War」は、このように対イラク戦争に反対する者の打倒から始まって、それ以降も同戦争に関して自分達の思惑通りに動けるように、ネオコン派が邪魔者や障害物を次々と排除していく様を、詳しくリポートしている。(という噂だ。私もまだ見ていない。)
このドキュメンタリーを見逃した方、またはアメリカの外側に住んでいらっしゃる方は、PBSのウェブサイト上("Watch the Full Series Online")で観ることができる。Part OneとPart Twoに分かれていて、Part Oneは15のチャプターから、Part Twoは11のチャプターから成っている。
大変興味深いドキュメンタリーらしい。どうぞご覧ください。
民主党の大統領候補を決める予備選だが、今の段階では、ヒラリー・クリントン連邦上院議員は、勝利した州の数、獲得した投票総数、獲得した各州の代議員数、と全てにおいて、バラク・オバマ連邦上院議員に劣っている。(予備選のシステムについてはこちらをご参考のこと。)例え残りの州全てにおいてクリントン議員が勝ったとしても、今のオバマ議員のリードを覆すチャンスはもはや無きに等しい。
クリントン議員が勝つには、特別代議員に頼るしかない。特別代議員は、民主党の有力者たちが務める。特別代議員のシステムは、一般有権者に大統領候補を選ぶ権利を任せてはいられない、として数十年前に設置された非常に反民主主義的なシステムである。各州の一般有権者の投票数により、代議員の割り当てが終わり、B候補よりA候補の方がより多く代議員を獲得したとする。理屈ではA候補が民主党の大統領候補になるはずだが、ここで特別代議員が割って入るわけである。もしA候補が気に入らない場合、特別代議員たちはB候補を支持し、Bを大統領候補にのし上がらせることが可能なのである。
今の段階では、クリントン議員を支持する特別代議員の数は、オバマ議員を支持する特別代議員の数よりほんの少しだけ多い。しかし、どちらの議員を支持するかまだ表明していない特別代議員は多く、クリントン議員のキャンペーン団は、「未定」の特別代議員を買収しようとして必死だ。しかし、クリントン議員のオバマ議員に対する汚い攻撃のやり方から、クリントン議員にうんざりしている「未定」特別代議員も多い。また、特別代議員のほとんどは連邦議員や州知事などで、自分達も選挙によって選ばれる身であることから、彼らは一般有権者の意思を無視した形で大統領候補の支持を表明し、一般有権者の怒りを買うことだけは、避けたいと思っている。つまり、クリントン議員はほとんど絶望的な状況にある。
普通なら、このように不利な状況にある民主党候補者は、ここでもうさっさとあきらめて予備選から抜け、有利な民主党候補者が11月の大統領本選にて共和党候補者を打倒できるように、彼のサポートに回るのが筋というものだ。
なぜクリントン議員は、さっさとそうしないのか。なぜ予備選に残ってオバマ議員を攻撃し続けるのか。予備選が長引けば長引くほど、オバマ議員の本選に対する準備が遅れることから、マッケイン議員に対して不利になる。一方マッケイン議員は、本選に向けて準備を着々と進めている。つまり、クリントン議員は、本選における民主党敗北のチャンスを大きくしているというわけだ。
人々は、クリントン議員のエゴがそうさせているのだろう、と言う。確かにクリントン議員はエゴの強そうな女性だが、彼女がそのエゴだけでオバマ議員と民主党を引き摺り下ろすか、といえばそれは間違っていると思う。
クリントン議員を駆り立てているのは、過去16年間影で民主党の実権を握ってきた「体制」である。16年前に夫のクリントン大統領が大統領になった時、彼は、DLC(民主党リーダーシップ議会)という組織の政治コンサルタント達と共に、民主党の新しい方向性を打ち出した。「新しい方向性」とは、民主党をもっと共和党寄りの党にすることであった。DLCのアジェンダのトップにあったのが、企業にとって好意的な政策を執り、企業からの献金を増やすことであった。企業からの献金が民主党内に溢れてくるに従って、DLCの民主党におけるパワーは確固たるものとなった。民主党議員達は、DLCの言うことを聞かざるをえなかった。
前に民主党議員たちがなかなか対イラク戦争を終わらせることができないのは、クリントン議員のバックについている政治コンサルタントたちのせいである、と書いたことがあるが、これがまさしくDLCである。DLCが、民主党議員達をがんじがらめにしているのである。
2000年、2004年の大統領選でも、民主党候補者(アル・ゴア元副大統領、ジョン・ケリー連邦上院議員)は、DLCの言うとおりにキャンペーンを行った。結果、2人とも共和党候補者に敗北してしまった。共和党候補者との違いを国民に明確に見せ付けることができなかったからだ。(「共和党寄り」がDLCのモットーなのだから、当然だ。)
しかし2004年の民主党の大統領予備選では、面白い状況が持ち上がっていた。DLCとは何の関係も無い、元バーモント州知事のハワード・ディーン氏が、リベラルな有権者の間で大人気となった。ディーン氏が対イラク戦争に反対したこと、そして、政治史上初めて、インターネット上の草の根キャンペーン、つまりネットルーツ・キャンペーンを効果的に展開させたことが原因である。つまり、ディーン氏は、「人々の、人々による、人々の為のキャンペーン」を展開させたのである。
DLCは、ディーン氏を止めなければならない、と思った。民主党の実権を握るのはDLCであって、断固として「人々」であってはならないのだ。DLCはありとあらゆる手段を使ってディーン氏を痛め付け、ケリー議員を民主党の候補者に仕立てあげた。ケリー議員は、本当はもっとリベラルで面白い政治家だと思うのだが、DLCに骨抜きにされた感じで、大統領本選では、本当に情けないキャンペーンを行っていた。結果、ブッシュ大統領に敗れた。(これに懲りて、ケリー議員は今、DLC/クリントン議員ではなく、オバマ議員を大統領候補として支持している。)
大統領候補への道を閉ざされたディーン氏は、民主党の権威体制を根本的に変えなければならない、と思った。だから、民主党委員会の委員長にさっさと収まり、「人々が参加する民主党政治」を実現するために草の根活動を全国で行っている。これが大成功で、2006年の選挙で民主党が大勝したのも、ディーン氏の力による所が大きい。DLCは、ディーン氏を民主党委員会から追い出したがっているが、ディーン氏は民主党内ですっかり尊敬を集めてしまっているため、手を出すことが出来ないでいる。
そして、ディーン氏のやり方を引き継ぎ、更に進歩させたのが、オバマ議員である。オバマ議員は、DLCを始めから拒絶し、「人々主体」の大統領予備選キャンペーンを行っている。クリントン議員の場合は、大企業による多額の献金が彼女のキャンペーンを可能にしているが、オバマ議員の場合は、百万人もの人々が100ドル以下の献金を持ち寄って(私もその1人だ)、彼のキャンペーンを可能にしているのである。オバマ議員のは、本当に人々の力によるキャンペーンなのである。
ディーン氏が民主党委員長のままで、オバマ議員が大統領になれば、もちろん民主党におけるDLCの影響力は小さくなってしまう。というより、DLCはお払い箱になるだろう。DLCは、そしてクリントン議員は、それを恐れているのである。16年間君臨してきた民主党の最高権威としての地位。簡単には諦められぬわけだ。特にDLCの政治コンサルタント達は、自分達の職が無くなるわけだから必死だ。彼らは、クリントン議員に自分達の生命を託しているのである。
だから、クリントン議員は、本当に最期の最期まで予備選に残って戦い抜くつもりだろう。それが大統領本選における共和党勝利-民主党敗北(オバマ議員敗北)につながるとしても。オバマ議員が本選で敗北すれば、少なくとも、DLCの存在を維持することができるからだ。
バラク・オバマ連邦上院議員は、ミュージシャンや俳優のファンが多いので、こういったビデオが次から次へとどんどん作られている。どうぞお楽しみあれ。
(1) ツイステッド・シスターの「アイ・ウォナ・ロック」のカバーで、「アイ・ウォント・バラク」。
この曲とビデオは、本当にツイステッド・シスターのギタリスト、ジェイ・ジェイ・フレンチが作ったもの。彼は、生涯を通じてリベラル派民主党支持者なのだそうだ。
(2) 有名なミュージシャンや俳優が集まって作った「イエス・ウィー・キャン」。
(3) これまた有名なミュージシャンや俳優が集まって作った「ウィー・アー・ザ・ワンズ」。
今年の大統領選予備選はオンライン・ビデオが大活躍しているが、今日はその中からあまりに馬鹿馬鹿しくて笑ってしまうビデオを2つ紹介。どうぞお楽しみあれ。
(1) ロバート・パーマーの「シンプリー・イレジスティブル」のカバーで、
(2) ウェザー・ガールズの「イッツ・レイニング・メン」のカバーで、
「レイニング・マッケイン」。
統計によれば、概して、
バラク・オバマ連邦上院議員を民主党大統領候補として支持する人の典型的なプロフィールは、都会に住み、大学またはそれ以上の高等教育を受け、プロフェッショナルな職業に就いている民主党支持者で、
ヒラリー・クリントン連邦上院議員を民主党大統領候補として支持する人の典型的プロフィールは、郊外または田舎に住み、高卒またはそれ以下の教育を受け、労働者階級にある民主党支持者である、そうだ。
この統計結果は、アメリカ内では周知の事実だろう。私もこの統計結果はありとあらゆるメディア媒体で目にしてきた(し、確かにアメリカ人の大卒以上の友人は例外なくオバマ議員を応援している)ので、この統計結果を疑ったことはない。
しかし、オバマ議員支持者が「スターバックス民主党支持者」、クリントン議員支持者が「ダンキン・ドーナッツ民主党支持者」と呼ばれているとは、このボストン・グローブ紙の記事を読むまで知らなかった。スターバックスで5ドル近く払ってエスプレッソ・ベースのコーヒーを買う人々はオバマ議員支持者、ダンキン・ドーナッツ(ドーナツ屋版マクドナルド、とでもいうべきか)の安いコーヒーを買う人々はクリントン議員支持者、というわけである。メディアは、勝手に人にレッテルを貼るのが本当に好きだ。オバマ議員の支持者のほとんどはリベラルな人々だが、リベラルな人々の中には、あまり倫理的・人道的ではないその経営方針からスターバックスを嫌っている人が多いというのに。
1980年代に共和党のレーガン大統領がアメリカに浸透させて以来、ずっとアメリカの政治と経済の基盤となってきた保守主義。この保守主義の理念に従い、アメリカは、「小さい政府」のスローガンを掲げ、政府機関の民営化、社会保障システムの縮小化、そして企業に対する規制緩和、規制取り払いをどんどん進行させてきた。
(余談だが、私は「privatization」を「民営化」と訳すことに非常に抵抗がある。「民営化」という言葉には、いかにも民衆が経営の実権を握っているような、ポジティブな感じを受けるからだ。アメリカにおける政府機関のprivatizationは、政府高官たちと深くつながりのある一握りの大企業が、民衆の思惑とは全く関係ない所で、企業利益のみを追求して経営するので、「民営化」よりは、「私営化」の方が、しっくりいく感じがする。でも、「政府機関の私営化」というのは日本語としてはなんだか変なので、「民営化」を使っている。)
この保守主義は、民主党のクリントン大統領下でもとどまることなく進んできた。いくら行政府は民主党が実権を握っていても、立法府(連邦議会)は上・下院共に共和党が主権を握っていたからだ。それに、実はクリントン大統領自身、民主党をもっと保守化させようと頑張った張本人でもある。連邦準備制度理事会の前理事長のアラン・グリーンスパン氏は、「クリントン大統領は、素晴らしい共和党大統領だ」と言ったくらいだ。
ところが今、アメリカの国民の間で、保守主義がついに衰退の兆候を見せている。3月12日に発表されたグリーンバーグ・リサーチによる「保守主義の退廃」と題された調査結果によると、大多数の国民が、レーガン政権以降初めて、国民の福祉を守ることが政府の役割であり、政府機関が行っていた業務を企業に任せることは国民のためにならず、企業に対する規制は消費者や従業員/労働者の福祉を守るために必要不可欠であると認識し始めたようである。そしてついに、国民の大半が、政府のプログラムとして国民健康保険システムの導入を望んでいる。
この国民の間における保守主義の衰退は、彼らが、今アメリカに存在する数多くの問題は、保守主義が生み出した弊害であるということに気付き始めたということを示している。山積みされた弊害のほんの一例としては、電力を故意に出し惜しみし、電気代を吊り上げ、消費者を苦しめたエンロン社(電力に関する規制取り払いが原因)、2005年にルイジアナ州を襲ったハリケーン・カトリーナ(ハリバートン社やブラックウォーター社、そして軍需企業に国民の税金を使い込む政府は、自然災害に備えて国の防災設備を整える資金も意思もなかった)、そして最近ではサブ・プライム・ローンから生じた経済破綻(金融機関に対する不十分な規制が元々の原因)がある。
もちろん、例え国民が保守主義の弊害に気付き始めたといっても、共和党であれ、民主党であれ、大企業と深いつながりにある政治家達が保守主義を捨てることはまずまだないだろう。例えば、いくら国民が国民健康保険システムを望んでいても、それを公約する者など、3人いる大統領選立候補者の中には誰もいない。保険業界から多額の献金を受け取っている民主党の候補者ヒラリー・クリントン連邦上院議員は、公約として医療システム改善プランを掲げているが、それは保険会社の保険を国民に買わせるプランであり、「絶対に政府は保険提供に介入しない」とまで言い切っている。保険業界に対する規制なしで保険を強制的に買わせられる国民は、たまったものではない。保険会社が、保険料を上げ放題上げ、支払い対象とする治療の範囲を狭めるだけ狭めるであろうことは、目に見えているからだ。同じく民主党候補者のバラク・オバマ連邦上院議員は、この点を指してクリントン議員のプランを非難しているが、彼自身も、政府による国民健康保険を実現したい、とまでは言ったことがない。共和党の候補者ジョン・マッケイン連邦上院議員などは、医療保険問題は丸無視している。
つまり、政界における保守主義は当分の間生き残るだろう。というより、大企業が政治家に対して力を持っている限り、消え去ることはないだろう。しかし、国民が今保守主義から目覚め始めているということは、今後政府に対して社会保障を充実させ、企業に対し規制を課し、国民の福祉・安全を守るよう求める声が、日増しに高くなっていく、ということだ。
希望が持てそうだ。
以下は、「保守主義の退廃」リポート結果から抜粋:
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下の意見に賛成の場合はYES、反対の場合は、NO:
自身の面倒をみれない国民の面倒をみるのは、政府の役割である。
YES 69% NO 28%
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下の意見に賛成の場合はYES、反対の場合は、NO:
企業は、自身の利益と国民の安全(または権利、福祉)のバランスがとれるように経営している。
YES 38% NO 58%
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どちらの意見に賛成?
A 政府による規制は、消費者の安全及び環境を保護する。
B 政府は、国民が購入する銃や車について、または他のことについても、規制を課すべきではない。
A 50% B 46%
(AがBを上回ったのは、2003年に同質問の答えに関して統計が取られ始めてから、これが初めてである。)
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どちらの意見に賛成?
A カナダのように、政府による国民医療保険システムを導入すべきだ。
B 医療システムは、政府の介入なしで、少しずつ改善することができる。
A 52% B 44%
サンディエゴ郡南東部の街、ポトレロに訓練所を建設しようとしていたブラックウォーターUSA社が、その建設プランをキャンセルする、と発表した。建設に反対したサンディエゴ郡住民の勝利だ。