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2005年暮れ辺りから、移民制度改革法案について連邦議会が議論を進めてきたが、結局法案を通すことはできなかった。不法滞在者に、罰金を課した後、行く行くは正当な移民となる法的手段を与えたい民主党と、不法滞在者を重犯罪者として永久に国外追放したい共和党の意図が一致しなかったのである。
連邦議会と平行して、各地の地方政府レベル(市レベル)でも移民問題について議論が行われていた。市によって、移民問題に対する態度は違っている。
「連邦政府(国土安全省-移民局)による不法滞在者取り締まりに、市は一切協力しない。」と宣言したカリフォルニア州のサンフランシスコ市やロサンゼルス市のように、不法滞在者を含めた移民全般に好意的であることをアピールする都市もあった。
また、先ごろ全国の主な都市の市長が集まって開いた全国市長会議では、移民はアメリカに貢献しているので、移民を圧迫・制限するような政策でなく、移民の権利を尊重した政策を執るべきである、というような決議が採択されている。(ちなみにこの市長会議では、対イラク戦争の終結を促す決議も採択されている。市長会議の決議は、ブッシュ政権、連邦議会、そして大統領選立候補者達それぞれに提出された。)
一方、不法滞在者を何とか撲滅したいとして、「反不法滞在者」条例を制定した市も沢山あった。ペンシルバニア州のヘイゼルトン市が制定した、家主が不法滞在者に住居を賃貸することを禁止する条例はその代表例であった。
ところがこのヘイゼルトン市の条例は違憲である、と、先日、ペンシルバニア州の連邦地域裁判所が判決を下した。大まかな理由は次の通りである。(1)移民に関することは連邦法の管轄である。この条例は連邦法の管轄を侵しており、連邦法が州・地方政府の法律より優位に立つと定める合衆国憲法の条項に違反している。また、(2)合法滞在者も不法滞在者も、公正に法の手続きを受けることを合衆国憲法により保障されている。ところがこの条例は、告知と聴聞の権利を不法滞在者であると疑われた者に十分に与えていないことから、違憲である。
ところで、カリフォルニア州サンディエゴ郡のエスコンディード市では、昨年市議会がヘイゼルトン市のものとそっくりの条例を可決した。条例は施行されないまま現在に至っているが、エスコンディード市議員たちは、施行を実現したいと願っている。ところが、連邦司法機関と州立法機関という大きな邪魔者が待ち受けており、前途多難だ。
- まず連邦地裁。エスコンディード市が条例を施行しようものなら、間違いなく条例の合憲性を問う訴訟が起こるであろうが、ペンシルバニア州の連邦地裁の判決と歩調を合わせて、南カリフォルニアの連邦地裁も違憲判決を下すであろう。
- そして連邦控訴裁。仮に、万が一、連邦地裁が合憲判決を下したとしても、アメリカの連邦控訴裁の中で最もリベラルであると知られる第9巡回裁判所(西海岸の州及びハワイ州のケースを担当)がそれを覆す判決を下すだろう。
- 更に、カリフォルニア州議会。州議会はちょうど今、ある州法案を可決しようとしている。その州法案とは、入居者がアメリカに合法滞在していることを家主に一々確認させるような条例を地方政府が制定することを禁じるもの。実はこの州法案は、エスコンディード市議会が上記条例を可決したことを受けて作られたもので、いわば州議会のエスコンディード市に対する「お叱り」であった。
Judge Voids Ordinance on Illegal Immigrants, New York Times, July 27, 2007
Escondido Council Divided over Hazelton Ruling's Effect, North County Times, July 26, 2007
1920年代から、女性の権利擁護家達は、合衆国憲法に、「性別に関係なく法の下に平等な権利を保障する」改正条項(Equal Rights Amendment、略してERA)を付加したい、と主張してきたが、未だ実現していない。ちなみに、日本の憲法はちゃんと保障しているのだ。(日本国憲法第14条-「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」)
連邦法である公民権法では、人種、性別、宗教などによる差別を禁止している。しかし、ERAの支持者達は、やはり合衆国憲法で男女平等を明確化したいと考えている。
また、政府が何らかの理由で市民を差別してしまい、その特定の差別が、合衆国憲法の「法の平等な保護を保障する」条項に違反しているか否かを審査するのに、連邦裁判所は、人種や宗教や出身国による差別には厳しいスタンダードを適用するが、性別による差別には、少しゆる目のスタンダードを適用するのが常となっている。合衆国憲法にERAが付加されれば、人種や宗教と同様、性別による差別も厳しいスタンダードで審査されるようになるだろう。
ERAは、何10年もの間に渡って連邦議会で議論され続けた後、やっと1972年に可決され、各州に批准の為に送られた。38州が批准しさえすれば改正条項付加が実現するのだが、1982年に35州で批准されて以来、そのまま止まってしまった。批准を拒否している州は、保守派の州(アラバマ、アリゾナ、アーカンソー、フロリダ、ジョージア、ルイジアナ、オクラホマなど)が多い。
ところがここ最近、ERAを批准していない各州で、ERAを批准しようという動きが始まったのだ。
もしかしたら、この数年間のうちに、ERA付加が実現するかもしれない。