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今回の選挙は面白い結果をもたらした。
まず、民主党が連邦議会の上・下院を共に制し、1月から両院において晴れて「与党」となることになった。
民主党が下院を制したということは、特に意義深い。なぜなら、下院議長は大統領後継者2番目に位置するパワフルな役職なのである。つまり、大統領が就任期間中に死亡した、もしくは弾劾された場合、副大統領が大統領に就任するが、もし副大統領も死亡してしまったり弾劾されてしまった場合は、次に大統領に就任するのが、下院議長なのである。1月、下院議長には、民主党の現院内総務であるナンシー・ぺロシ下院議員が収まる。アメリカの政治界でNO.3の座に、初めて女性が就くこととなったのだ。ぺロシ議員は、アメリカで最も権力のある女性となる。
ぺロシ議員はサンフランシスコの選出議員であることから、民主党議員の中でも結構先進的な考えを持っている。アメリカの政治界NO.1(ブッシュ大統領)とNO.2(チェイニー副大統領)が極右派で、いきなりNO.3がサンフランシスコを代表する先進的な女性、という図式は面白い。とはいえ、ぺロシ議員よりもリベラルな民主党議員はいるし、彼女はどちらかというと「うまい政治家」であり、融通を利かすタイプである。それにしても、南部や中部の州から選出された民主党議員の中には、中道派も沢山おり、彼らに不満を与えないように党下院の方針をうまく仕切っていかなければならないぺロシ議員の責務は大変なものになるだろう。
さて、各州の知事選においても、民主党の知事が共和党の知事よりも多くなった。最も民主党寄りのカリフォルニア州が共和党のシュワルツェネガー知事を維持したのは皮肉だが、彼の場合は、早い時期からブッシュ大統領と距離を置き、環境問題に取り組むなど「違ったタイプの共和党政治家」へのイメージ転換を図ったのが功を奏したといえる。
選挙の間接的結果として、ラムズフェルド国防長官が強制的に辞任させられることとなった。(イギリス人である知人によれば、ヨーロッパ中が歓喜しているそうだ。ヨーロッパ諸国の人々は、ラムズフェルド国防長官を、ブッシュ大統領と同等もしくはそれ以上に嫌っていたようである。国防長官が対イラク戦争の「顔」であったからであろうが、それと共に、同戦争に反対したフランス、ドイツ、ベルギーなどに頭に来た国防長官が、「古臭いヨーロッパ諸国」と呼んで馬鹿にしたこともヨーロッパ人の神経を逆撫でしたのかもしれない。)
さて、カリフォルニア州の知事選だが、今年始めまでは絶対再選は無理と噂されていたシュワルツェネガー知事が不死鳥のように甦り、再選を果たすだろうと見られている。なぜかというと。
まず彼は、映画スターとして知名度があり、だからあらゆるテレビ番組にアクセスできる特権を持つ為、他の候補者に比べて数倍のアドバンテージがある。
民主党の候補者であるフィル・アンジェリーデス氏が、人は良さそうだがあまりカリスマ的でないことも原因だ。これは州の民主党有力者達のせいでもある。予備選でアンジェリーデス氏に対抗して出馬していたスティーブ・ウェストリー氏は、一般州民の間では、アンジェリーデス氏よりよっぽど人気があり、もし民主党の候補者になれば、シュワルツェネガー氏にとって手強い相手となるはずだった。ところが州の民主党有力者達は、仲間であるアンジェリーデス氏を党の候補者にする為に、ウェストリー氏を猛攻撃し、予備選で落選させることに見事に成功したのだった。
またシュワルツェネガー知事は、地球温暖化現象への対策や環境保護に関して積極的に取り組んでいる、というメッセージを州民に伝達することに成功した。カリフォルニアの州民は、結構地球温暖化現象や環境汚染を気にする人達なのである。まず知事は、イギリスのブレア首相を招いて、地球温暖化現象を抑える為の技術開発を、イギリスとカリフォルニアで相互協力して行うことにした。この時の記者会見は派手に行われた。(ちなみに、「イギリスとアメリカ」ではそのようなことが無理なのだ。ブッシュ大統領がそういうことに無関心なので。)また、地球温暖化を抑える目的でカリフォルニア州議会が通した州案に署名する時も、メディアに大々的に報道させ、州民にアピールした。法案を作ったのは州議会なのだが、知事がお株を奪った感じだ。
環境保護は、どちらかといえば民主党の政策分野である。シュワルツェネガー知事は、妻のマリア・シュライバー氏がケネディ元大統領一家の出身であることから、彼女、そして彼女の連れて来たアドバイザー達から、環境保護政策を執り入れるよううまく助言されていると思われる。
カリフォルニア州議会は、アメリカの州議会としては初めて、同性結婚を許可する法案を可決した。しかし、シュワルツェネガー知事が署名しなかったので、この法案は法律にならず、そのままお蔵入りとなった。
カリフォルニアでは、現在平行して同性婚を合法化させる為の訴訟が展開されている。下級裁判所が「同性婚を禁止した州法は州の憲法違反である為、無効にすべき」という判決を下し、同性婚反対派がその判決を不服として上告している。シュワルツェネガー知事が同性婚を許可する法案に署名しなかったのは、彼曰く、その訴訟の最終判決を待った方がよいからなのだそうだ。
ところで真実はこうらしい:共和党支持者の怒りを恐れて法案に署名しなかったものの、「同性婚に反対」と大っぴらに言うと、ゲイ・レズビアンや彼らの権利を擁護する人達から非難の矢が飛んでくることが分かっているので、「裁判所の判決」を楯に身を隠した。つまり、彼は、弱虫なのだった。
シュワルツェネガー知事自身は、ゲイに対して悪い感情は持ってないはずだ。ゲイのポルノ雑誌のモデルをしたくらいだから(警告:ページ中ほどにヌード写真あり)。
Schwarzenegger Vetoes Bill Legalizing Gay Marriage
Los Angeles Times, September 29, 2005
シュワルツェネガー知事の発言が、また波紋を呼んでいる。彼は、ミニットマンを賞賛し、「カリフォルニアに来れば歓迎する。」と述べたのだ。
ミニットマンを少し説明しよう。
1ヶ 月前になるが、反外国人/反移民の右翼的な人々が集まって、「ミニットマン・プロジェクト」なるものを計画した。ミニットマンとは、もともとは、武器と戦 術の訓練を受け、市民革命で闘って功績を収めた一般人からなる武装集団のことを指す。(と思う。間違っていたらごめんなさい。)「ミニットマン・プロジェ クト」は、アメリカ南端の国境を守ろう、というプロジェクトだ。
祖国で貧困に窮しており、家族を食べさせる為、又はより良い人生を送る為 に、国境を渡ってアメリカにやって来るメキシコ人は後を絶たない。もちろんアメリカには不法滞在しているわけだが、彼らは生活がかかっているので、そんな ことは言っていられない。彼らは安い賃金で喜んで、農場や建築現場で働いたり、レストランで下働きをしたりする。だからアメリカの雇用主もどんどん彼らを 雇う。需要と供給が見合っているのだ。
右翼アメリカ人達は、このメキシコ人達の存在が気に入らない。「不法滞在している彼らが、国や州の 社会保障サービスをただで使用していることが許せない。」という。しかし実際は、調査で明らかになっているように、不法滞在しているメキシコ人のほとんど はちゃんと税金を国と州に払っている。また言うまでもないが、その労働と消費によって彼らはアメリカの経済に大きく貢献している。
が、そういった細かな事実には、右翼アメリカ人達は耳を貸さない。先ほども述べたが、彼らは元々「反外国人」であり、外国人全てを相手にすることが不可能な為、「不法滞在しているメキシコ人」にターゲットを絞っただけなのである。
彼らは、ミニットマン・プロジェクトの名の下、アリゾナ州のメキシコ沿いの国境に集まって、不法に国境を渡ってくるメキシコ人を捕まえることにした。インターネット上の呼びかけに、アメリカ中から右翼達が国境沿いに結集。(写真はこちら:
http://www.minutemanproject.com/photos/photos_2005apr30_wrapup.html )
ミニットマンというだけあって、みな銃を持参した。このプロジェクトは1ヶ月間行われた。
ミ ニットマンに対して、世論は厳しかった。国境沿いの市の市長は「外国人嫌いの者達のクレイジーなアイデア」と言った。普段は不法滞在者に対していい感情を 抱いていない一般人たちでさえも、「レッドネック(米国南部に住む無知で無学な白人。【軽蔑語】)が集まって、お遊びでメキシコ人狩りをしているよう だ。」と眉をひそめた。 外国人が苦手と評判のブッシュ大統領でさえも、「問題を大きくするだけだ。」と言った。
ブッシュ大統領の言うこ とが正しかったことはあまり無いが、ミニットマンに関しては、ぴたりと的中した。ミニットマン達は、国境沿いに張られたアラームを誤って鳴らし、国境パト ロールを出動させてしまったり、記念写真や記念ビデオを撮影する為にメキシコ人を拘束したりした。(他人を拘束するのはどんな状況でも違法。)「ミニット マンは私たちの仕事の邪魔をしている!」と国境パトロール隊達はかんかんだった。
そして4月末、ミニットマンは成功を宣言し、アリゾナ州におけるプロジェクトを終了した。前述の市長の反応はこうだ。「なにが成功だ。彼らはアリゾナに国際的な恥をかかせただけだ。」
さて批判にも負けず、ミニットマンは、「今度はカリフォルニア州におけるメキシコとの国境を守る為に、サンディエゴに向かう。」と宣言した。そんな時だ。シュワルツェネガー知事がミニットマンの功績を讃え、「彼らがカリフォルニアに来れば歓迎する。」と言ったのは。
このミニットマンの支持に対し、知事は強い非難を浴びた。
知 事は、少し前にも口をすべらせて波紋を呼んだ。ロサンゼルスのラテン系のラジオ・ステーションのビルボードに「ロサンゼルス、カリフォルニア」の代わりに 「ロサンゼルス、メキシコ」と書かれてあるのを見て、知事は機嫌を損ねた。そして、「アメリカの国境を閉鎖すべきだ。」と述べたのだ。慌てて「私は英語が うまくないからあのような発言になってしまった。」と言い訳したのだが、ラテン系の人々の知事に対する不信感を消すことは出来なかった。
ある政治評論家によれば、知事は、州内の超保守派・極右派に受けようとしてこのような発言を行ったのだろう、ということだが、移民の多いカリフォルニアでこのような発言を繰り返すのは、自殺行為としかいいようがない。知事の支持率は、既に40%まで落ちている。
ミニットマン支持発言の波紋が大きくなる一方、知事は言い訳に必死だ。「もちろん私は移民が増えることには大賛成だ。私自身、移民なのだから。私は移民政策のチャンピオンだ。ただ不法滞在などの不法な行為は許可できない、と私は言っているだけなのだ。」
ちなみに、オーストリアからアメリカに渡ってきた時、労働許可証を持っていなかったシュワルツェネガー氏は、不法就労した過去を持つ。
Polls Push Governor to the Border
Los Angeles Times, April 30, 2005
アーノルド・シュワルツェネガー氏にとって、どこに行っても熱心なファンに追いかけれらたのはもう昔の話。カリフォルニア州知事となった今は、どこに行っても自分に対して抗議するプロテスター達に追いかけられる。
シュ ワルツェネガー知事は、カリフォルニア州の赤字を埋める為に州政府の福祉関連の予算を大幅に削減。病院や学校への経費もカットした。また、州政府の腐敗を 一掃するという公約で知事になっておきながらも、前知事以上に熱心に企業から献金を集め、企業に好意的な政策を執っている。更に女性に対する差別的な発言 が度重なっている。
そんなシュワルツェネガー知事に失望したカリフォ ルニア州民は少なくないが、特に彼を目の敵にしているのが看護婦達と消防士達だ。知事が、病院に最低数の看護婦の雇用を義務付ける州法を無効にし、消防士 などの公務員の退職金制度を民営化させようとしているからだ。
シュ ワルツェネガー知事がどこに行こうと、看護婦や消防士は待ち受けてい る。サクラメントで映画「Be Cool」のプレミアに招待された知事は、敷かれた赤じゅうたんの上を歩いて映画館に入るはずだったのが、赤じゅうたんの脇にずらりと並ぶ看護婦達の存在 を確認し、こそこそと裏口から映画館に入った。サンディエゴで献金集めの為にパーティーに出席していた時も彼らはいた。ロサンゼルスのブレントウッド地区の彼の自宅前にも。
し かもカリフォルニア内だけではない。ニューヨークで行われた献金集めパーティーにシュワルツェネガー知事が出席した時も、彼らはいたのだ。消防士達はわざ わざカリフォルニアから飛んだ。一方看護婦達は、ニューヨークの看護婦達にコンタクトを取って、現場に向かってもらっ た。
ロサンゼルス・タイムズ紙によると、看護婦や消防士達は、知事の公的行事参加から私的なパーティー出席まで、スケジュールを調べつくしているらしい。
シュワルツェネガー知事は、内心は一物あるだろうが、表面上は彼らを無視しているようだ。ストリート上における知事対看護婦・消防士の戦いは、忍耐の強い方が勝ち、という感じだ。
ちなみに看護婦達は、知事に対し訴訟も起こしている。先週州の下級裁判所は、知事が病院に最低数の看護婦の雇用を義務付ける州法を無視したことは、知事の権限を越えた行動である、と判決を下した。もちろん知事は上告するつもりだが、裁判所での戦いにおいては、まずは看護婦達が最初の勝利を収めたということだ。
A New Kind of Crowd for Governor
Los Angeles Times, Mar. 9, 2005