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過去半世紀ほど、歴代大統領は、自分や自分の党に多額の献金をした者への褒美として、彼らを各国の駐在大使に任命してきた。
もちろん、外交官としてキャリアを積んできた人々やベテラン政治家たちを任命することもある。例えば元日本駐在大使のウォルター・モンデールやハワード・ベイカーなどはそうだった。
しかし、今回オバマ大統領から在日大使に任命されたジョン・ルースは、シリコン・バレーの弁護士で、外交・政治経験は全く無い。日本の事情もあまり知らなさそうだ。明らかに、大統領選のキャンペーンに多額を献金してくれたルース氏に、オバマ大統領が褒美を与える意味で任命した、ということは間違いない。(ちなみに、ルース氏より更に多くの額をオバマ大統領の選挙キャンペーンまたは民主党に献金した人々は、ヨーロッパ諸国の駐在大使に任命されている。)
Center for Responsive Politics が、どの国の駐在大使に任命された人がどれほどの額をオバマ大統領選挙キャンペーン/民主党に献金したか、金額の多い順にまとめてエクセル表にしている。面白いデータなのでどうぞご覧ください:
http://www.opensecrets.org/news/Obama_ambassador_Data090807.xls
前にも書いたことがあるが、オバマ次期大統領は、反ゲイ・レズビアン主義でカリフォルニア州法案8を推したリック・ウォーレン牧師に、大統領就任式の晴れの役目を与えた。この為オバマ氏は、リベラル派/プログレッシブ派/ゲイ・レズビアン/ゲイ・レズビアンの権利を擁護する人々から、強い批判を受けた。
この批判をやわらげる為、オバマ氏は、大統領就任式の2日前に行われる神への祈りを捧げる行事で指揮をとるようにと、エピスコパル教会のジーン・ロビンソン司教に依頼した。ロビンソン司教は、ゲイである。
(エピスコパル教会《英国聖教=チャーチ・オブ・イングランド》は、アフリカにある教会を除いては、一般的にとてもリベラル。私はエピスコパル教会の信者ではないが、以前住んでいた近所にエピスコパル教会があり、教会の主宰するコミュニティ・プログラムに時々参加していた。ダルフールの虐殺についてコミュニティを教育したり、カリフォルニア州法案8に強く反対したりしていた。)
ロビンソン司教を選択したことは、素晴らしい決断だといえる。
オバマ氏の大統領就任式で、祝辞を述べ、神への祈りを捧げる牧師として、リック・ウォーレン氏が選ばれた。ウォーレン牧師は保守派で、戦争に賛成したし、反ゲイ・レズビアンの立場をとっている。カリフォルニア州法案8を支持する広告ビデオまで作成している。
また、教育省長官には、アーニー・ダンカン氏が選ばれた。ダンカン氏は、シカゴの学校区長を務めていた時、ゲイ・レズビアンの生徒をストレートの生徒から隔離させたいとして、ゲイ・レズビアンの生徒のみを集めた学校の設立を提案したことがある。
オバマ氏は、右派・保守派を喜ばせようとしているのだろう。それに彼自身、残念ながら、「結婚は男女間のみに存在すべきもの。」とよく主張してきた。しかし、ここまでゲイ・レズビアンを傷付けるようなことをしなくてもいいだろうに? 右派・保守派はオバマ氏に投票しなかったが、ゲイ・レズビアンは圧倒的にオバマ氏に投票したのだ。自分を支持してくれたグループに蹴りを入れるとは、なんとまあ冷たいことか。
オバマ次期政権のエネルギー省長官は、カリフォルニア大学バークレー校の科学研究所ディレクターであるスティーブン・チュウ氏。チュウ氏は、ノーベル賞受賞者の科学者/物理学者で、地球温暖化対策の代替エネルギー開発のエキスパート。
地球温暖化現象など存在しないと主張し続け、石油産業のロビイストをエネルギー省長官に選んできたブッシュ政権から180度転換。地球温暖化に対して真剣に取り組もうとするオバマ次期大統領の意志がひしひしと感じられる。
素晴らしい!!!
国務長官=ヒラリー・クリントン連邦上院議員 (イラク戦争に賛同。イランの国軍をテロ組織と呼び、イランへの攻撃を容赦もしない、と言った。非常に親イスラエル。)
国防長官=ロバート・ゲイツ現ブッシュ政権下国防長官
国家安全アドバイザー=ジェイムズ・ジョーンズ元NATO司令官 (現エネルギー資源政策コンサルタント。石油産業と大変親しい。)
というのが、オバマ次期政権のいわゆる「国家安全チーム」の顔ぶれだ。紛れもなく、好戦/右派なチームだ。
(余談だが、私は、国務長官を「国家安全チーム」の成分にしてしまっていること自体に疑問を感じる。国務長官といえば、日本やイギリスで言えば外相。外交官のトップだ。外交は、国家安全目的だけで行うものなのか?他国と協力し合って世界の問題(飢饉、エイズ、温暖化現象)を解決する、他国との文化交流を促進する、など、もっとポジティブで大きな目的を外交に与えられないのか? 国家安全という枠組みの中につっこまれてしまっている外交-納得いかない。)
どうしてこのような好戦/右派な顔ぶれになったのかを推察してみると、次の3つが考えられる。
(1) オバマ次期大統領自身、軍事路線の強硬外交を推し進めたい、と考えている。
(2) オバマ次期大統領は、対話中心で平和志向の外交を推し進めたいが、同時に、共和党や右派からの「それ見たことか。オバマはへなちょこ大統領だ。」という批判が怖い。だから、最初は一応右派の人材を国家安全チームに登用して強硬路線の外交をとり、共和党をまず黙らせておいてから、いずれ平和志向の外交に路線変更する。
(3) オバマ次期大統領は、平和志向の外交を推し進めるに当たって、スムーズに事が運ぶよう、国家安全チームをうまく使うつもり。この場合、オバマ大統領が国家安全チームの面々に期待することは、2つ。自分のイディオロジーや思惑をある程度押し殺してオバマ大統領(の政策)に忠誠心を持つこと。そして、自分の人脈をうまく使うことによって、オバマ大統領の政策遂行を助けること。
たとえば、クリントン議員は、イスラエルのロビー団体、AIPACととても親しい。オバマ大統領が、対中東政策をアラブ諸国にとってより公平な形にしたい場合、彼女は、AIPAC、そしてイスラエルをうまく説得できるかもしれない。これは確かに、初めからAIPACを毛嫌いしていた人物にはできないことで、AIPACと親しい仲にある彼女だからこそできることではないだろうか?と思える。
また、オバマ大統領からイラクからの撤退を命じられたゲイツ国防長官は、右派系戦争大好き軍高官をうまくまとめ、右派系メディアを納得させながら、撤退をスムーズに実行させることができるかもしれない。
そしてジム・ジョーンズ氏は、石油産業と親しい仲にあるので、今後の国家安全政策に関し、石油産業の干渉をある程度まで抑えることができるかもしれない。
実際には、(1)も(2)も(3)もある程度まで当たっているという気がする。
オバマ次期政権の各役職の候補者を見ていると、クリントン政権とブッシュ政権にいた人々の使い回し、と言う感じだ。特に、国防省長官には、現ゲイツ長官をそのまま引き続き起用するらしいし、諜報機関(CIAやNSA)のディレクターには、捕虜に対する拷問や裁判所の令状無しの盗聴、といったブッシュ政権の最悪のポリシーを支持した人物を登用するらしい。これがオバマ次期大統領の言う「change」なのか?がっくりくる。
ただ、環境保護局のディレクターには、現カリフォルニア州環境保護局ディレクターが登用される予定で、これだけは大歓迎だ。彼女は、環境保護に誰よりも熱心で、とても有能な人である。
オバマ次期政権は、グァンタナモ湾収容所を閉じるそうだ。グァンタナモ湾収容所は、ブッシュ政権の数々の悪行を代表するものの1つ。オバマ政権は、収容所を閉めることによって、ブッシュ政権との違いを大きく打ち出そうとしている。
オバマ次期大統領の法律アドバイザーである、ハーバード大学法律学校のローレンス・トライブ教授によれば、収容所に拘束されている捕虜の運命は次の通りだそうだ。
(1)釈放され、祖国に帰される。(何の証拠も無いのに拘束されたままの人々。)
(2)連邦裁判所で裁かれる。
(3)国家安全裁判所(仮名)で裁かれる。
国家安全裁判所(仮名)は、危険なテロリストと判断された捕虜を裁くために、オバマ政権が新設する、連邦裁判所と軍事委員会のハイブリッドの裁判所。連邦裁判所で裁かれる被告は、合衆国憲法や刑事法にて様々な権利を保障されている。国家安全裁判所で裁かれる被告は、連邦裁判所で裁かれる被告ほどの権利は保障されないが、軍事委員会のように不公平で秘密に包まれた裁判ではなく、公平で透明性のある裁判を受けることになる、らしい。(トライブ教授によれば。)
ACLU(米国市民自由権連合)は、グァンタナモ湾収容所を閉めるというオバマ次期政権の意図は、歓迎するが、国家安全裁判所の設置については反対する、と発表している。グァンタナモ湾収容所の捕虜たちは、みな拷問を受けている。連邦裁判所では、合衆国憲法や刑事法により、拷問による自白は証拠として使ってはいけないことになっている。しかし国家安全裁判所では、拷問による自白がそのまま証拠として使われる可能性がある。米政府のグァンタナモ捕虜に対する扱いは、最初から不公平(または不法)だった。この不公平なプロセスを正すには、連邦裁判所でちゃんと裁くしかない。というのが、ACLUの主張だ。
ACLUの言っていることは、もちろん一番正しい。しかし、政治的な観点から言えば、オバマ政権が、「捕虜を全て連邦裁判所で裁く」と言ったりすれば、共和党、そして中道派の民主党議員達から大批判を受けることになり、メディアも大騒ぎするだろう。メディアが大騒ぎすれば、世論もオバマ政権に批判的になることは間違いない。そうすると、グァンタナモ湾収容所を閉じることさえ難しくなってくる。法廷における捕虜の人々の権利を尊重することは大切なことだが、グァンタナモ湾収容所を閉めることができなくなっては、元も子もない。ACLUには、正しいと思うことを主張し続けて、オバマ政権にプレッシャーをかけ続けてもらいたいが、現実には、国家安全裁判所の設置はやむを得ないだろう。
さて、グァンタナモ湾収容所を閉じた後、アフガニスタンの米軍捕虜収容所は、どうするのだろうか。
グァンタナモ湾収容所に拘束されたスーダン人の捕虜を弁護していた、連邦公選弁護士のスティーブ・ワックス氏の講演が、7月に近くの図書館で行われ、行って来た。ワックス氏によれば、彼のクライアント、アデル・ハマド氏は、グァンタナモに移送される前、アフガニスタンの米軍捕虜収容所でしばらくの間拘束されていた。このアフガニスタンの収容所は、グァンタナモより更にひどいものだという。ここでの拷問の程度はひどく、ハマド氏は、肋骨や腕骨の骨折まで起こしたが、医療手当てもなかなか与えられなかったという。
アフガニスタンの収容所の問題、そして、アフガニスタンでの戦争はいつ解決するのであろうか?
昨日共和党全国大会開催場の外で逮捕されたエイミー・グッドマンは、昨夜のうちに釈放されたが、公務執行妨害で起訴される予定だ。エイミーは何をしたのか?といえば、彼女がホストをしている番組、「Democracy Now」のプロデューサー2人が逮捕されたことを知って、警察に説明を求めただけだった。逮捕されたプロデューサー2人は何をしたのか?といえば、反戦プロテストを取材していただけだった。プロデューサーたちは、なんと騒乱共謀罪という重罪で起訴される予定だ。
明らかに行政機関の権限濫用である。
今朝のDemocracy Nowでは、エイミーとプロデューサーたちが、昨日の逮捕について語った。プロデューサーのうちの1人が、昨日警察に地面に叩き倒され、引き摺られている時に撮った映像も、流された。今朝のDemocracy Nowは、こちらで見ることができる。(逮捕に関する部分は、番組開始後約8分40秒辺りから始まる。)
エイミーとプロデューサーが無起訴で終わるよう、祈ろう。
このサイトでは、共和党全国大会開催場の外側の様子(共和党に対するプロテスト、反戦プロテスト、そして彼らに過剰対応する警察)を撮ったビデオが、たくさんアップロードされている。